経済学入門(2) 分業

ロビンソー・クルーソーの無人島における生活と,現代社会におけるあなたの生活はどちらが物質的に豊かでしょうか?ロビンソー・クルーソーはどれほど無人島の生活に熟練したとしても,自動車やテレビを生産することができるようにはならないしょう。それに対して,あなたは自分自身で生産しなくても自動車やテレビを購入し,ドライブしたり番組を楽しんだりすることができます。

この違いはいったいどこから来るのでしょうか?それは無人島においてロビンソー・クルーソーは自分で消費するものはすべて自分で生産しなければいけないのに対し,あなたが暮らす現代社会では分業により効率的な生産が行われているからです。

経済学の父といわれるアダム・スミスは『国富論』という本の中で,ピン工場の例を挙げて分業の利益を説明しています。ピンを作るためには,鉄を切ったり曲げたりといくつもの工程があり,すべてを一人で行うと一日に生産できるピンの数はせいぜい数十本です。しかし,ピン工場ではそれぞれの工程を数人ずつで分担して流れ作業を行っており,それにより生産量は一人で生産を行った場合と比べものにならないくらい大きくなります。たとえば,一人で生産を行った場合の生産量が一日50本でも,10人で工程を分担することにより5000本ものピンを生産することできるようになります。これが分業の利益です。

もちろん分業というのはアダム・スミスという一人の経済学者が考え出して,生産に導入されたものではありません。もともと,分業をした方が効率的な生産を行うことができるということは経験的に広く知られており,実際にピン工場でもそのような生産の方法がとられていたのです。そのような現象を理論的に説明しようと試みたのがアダム・スミスです。経済学をはじめとする社会科学では,社会で観察されるさまざまな現象や人々の行動を理論的に説明することで社会の仕組みを明らかにしようとするのです。

アダム・スミスはピン工場の例を示して,一つの財・サービスのさまざまな生産工程を異なる労働者が担当する分業の利益を説明しました。経済社会においてはそれぞれの財・サービスの生産工程が分業されているだけではなく,さまざまな労働者がさまざまな異なる財・サービスの生産に特化しており,生産された財・サービスは市場で取引されています。また,国際間でも分業が行われており,貿易によって自国では生産されていないものも消費することができます。これらを交易の利益といいます。

 

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