経済学入門(1) 経済学とはなにか?

経済とは何でしょうか?簡単に言ってしまえば,生産,交換,消費といった活動が経済です。そして,経済学というのは経済の仕組みを研究し,「希少な資源を有効に利用するためにはどうすればいいか」を考える学問です・・・というのはだいたいの経済学の教科書に書いてあることなのですが,これだけでは具体的なイメージが浮かばず,最初から躓いてしまう人も少なくないと思います。そこで,ここでは最も単純な経済である「ロビンソー・クルーソー経済」というものを例に,経済学がどのようなものであるかを理解しましょう。

あなたはロビンソー・クルーソーを知っているでしょうか?彼は,ダニエル・デフォーという作者が書いた小説の主人公です。物語の中で彼はは無人島に漂着し,魚釣りをしたり木の実を拾ったりして生活します。無人島には彼一人しかいないので,誰かと協力したり取引を行ったりすることはできません。完全に自給自足の生活です。ロビンソー・クルーソー経済とは,このような自給自足の経済のことをいいます。

無人島の生活でロビンソン・クルーソーが決めなければいけないことは,一日をどのように過ごすかということです。生きていくためには食料が必要ですから,魚釣りに出るか,木の実を拾いに出かける必要があります。このような活動を生産といいます。

一日は24時間しかありませんから,魚を多く獲ろうと思えば木の実はあきらめなければいけません。逆に木の実を多く獲ろうと思えば,魚はあきらめなければいけません。このように,一方のためにもう一方をあきらめなければいけないような関係を,トレードオフといいます。すなわち,魚と木の実はトレードオフです。

魚と木の実がトレードオフの関係にあるのは,時間が希少な資源であるからです。希少というのはほしいものがほしいと思っただけ手に入るわけではない状態です。時間は希少であるため,ロビンソー・クルーソーは何をどれだけ生産するかということを決めなければいけないのです。このように行動を決めることを意思決定といいます。

ロビンソー・クルーソーは獲ってきた魚や木の実を食べます。このような活動を消費といいます。獲ってきた魚はすぐに食べないと腐ってしまうので,すべてその日のうちに消費します。つまり,ロビンソー・クルーソーにとって魚をいくら生産するかという意思決定は,いくら消費するかという意思決定と同じです。

一方,木の実は保存しておくことができるので,採ってきたその日に消費してもいいし,保存しておいて後から消費することもできます。このような活動を貯蓄といいます。貯蓄に関する意思決定は言い換えればいつ消費を行うかという意思決定と同じです。

このような無人島での自給自足の生産・消費活動をロビンソー・クルーソー経済といいます。ロビンソー・クルーソー経済における経済問題は,魚や木の実をどれだけ生産・消費するかという意思決定ということになります。

実際の経済では,多数の人々が生産・消費活動を行っています。ロビンソー・クルーソー経済と違って,農業を営んでいる人もいれば自動車を生産している人もいます。通常は農家が自動車を生産することはなく,自動車の生産者が農作物を生産することはありません。農家は農作物だけを生産し,自動車の生産者は自動車だけを生産します。これを分業といいます。そして,分業により生産したものを交換することで農家と自動車の生産者の両方が,農作物を食べることも自動車に乗ることもできるのです。

分業と交換が行われている経済では,ひとりひとりの個人が希少な資源である時間をどのように用いるかといった意思決定に加えて,だれがどの活動に従事するかといった意思決定も必要です。また,土地も無限にあるわけではないし,石油や天然ガスといった天然資源も無尽蔵ではありません。そのため,すべての希少な資源を,それを最も必要とするところで利用することを考えなければいけません。希少な資源をそれを最も必要とするところで利用することを有効に,あるいは効率的に利用するといいます。

社会において,だれがなにをどれだけ生産し,だれがなにをどれだけ消費するかという配分を決める方法はいろいろあります。たとえば,絶対的な権力を持った国家がすべてを計画して国民に指示するというのがひとつの方法です。このような経済を計画経済といいます。実際にソビエト連邦や東ドイツなどは1990年頃までこのような中央集権的な経済運営を行っていました。それに対して市場経済では,さまざまな生産者によって生産されたさまざまなものは,市場取引を通じて消費者のもとに行き渡ります。ここでは,生産者は自分でなにをどれだけ生産するかを決定し,消費者は自分でなにをどれだけ消費するかを決定します。市場は非常に優れた機能を持っており,社会における希少な資源をそれを最も必要とする人のもとへ有効に配分します。個人の意思決定と市場の機能を分析するのが「ミクロ経済学」という分野です。

さて,「希少な資源を有効に利用する」ということの意味は理解していただけたでしょうか?もちろん,地球上のあらゆる資源は希少ですから,経済学の応用範囲は極めて広いです。経済学というのは,分析対象によってというよりは,むしろその方法に特徴付けられます。つまり,「~を分析するのが経済学」というよりは,どのような対象であっても分析方法が経済学の考え方に基づいていれば,それは経済学です。

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