教育投資の費用と便益

投資というのは,費用を負担することにより,後になんらかの便益を得られるということです。教育投資の場合は,教育にかかる費用を負担することで,将来の高い所得という便益を得ることができます。

大学進学を投資と考えれば,その費用は学費や教科書代,定期代などの金銭的費用(直接費用)と,かりに大学に進学せずに働いていれば得られていたであろう所得(間接費用)の合計ということになります。とりわけ後者は機会費用ともいわれ,進学に関する意思決定において重要です。実際に,大学の4年間の学費は国立大学で250万円,私立文系で400万円,私立理系で500万円ほどですが,19歳から22歳までの高卒労働者の平均年収は約250万円なので,大学在学中の4年間で間接費用は1000万円となり,直接費用を大きく上回ることになります。

一方,大学進学の便益は,卒業後から引退するまでに得られる高卒労働者との賃金の差額ということになります。大卒労働者の平均賃金は,卒業後すぐの22歳や23歳のときには同年齢の高卒労働者よりも低いでしが,すぐに逆転し生涯所得では高卒労働者を大きく上回ります。しかし,ここで考慮しなければならないのは,このような便益を得られるのは現在のことではなく将来のことであるということです。

人は現在のことと将来のこととを比べるとき,より現在のことを重視します。このことを,将来のことを割り引くといいます。たとえば,現在もらえる1万円と,1年後にもらえる1万円の価値は同じではありません。かりに現在1万円をもらって銀行に預けておくと,1年後には利息を受け取ることができます。その利息が5%であるとすれば,1年後に1万500円をもらうということの価値は,現在1万円をもらうということの価値と等しくなります。このように,将来のことを現在の価値に置き換えたものを割引現在価値といいます。

大学進学が,十分な収益の見込まれる投資であるかどうかを判断するためには,現在支払う費用と将来得られる便益とを比較する必要があります。将来のことは割り引いて考えなければなりませんから,単に生涯所得を比較することはあまり意味がありません。そこで,将来の便益を割引現在価値に換算して現在支払う費用と比較するわけです。

現在のことと比べて将来のことをどれだけ割り引いて考えるかという比率のことを割引率といいます。当然ですが,割引率は人によって違います。より将来のことを重視する人は割引率が低く,より現在志向が強い人は割引率が高いということです。割引率の低い人ほど大学進学の便益の割引現在価値は大きくなるため,より大学に進学することを選択しやすいということになります。

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