経済学入門(7) GDP統計について

実際に,日本国内で産み出されている付加価値,すなわちGDPはいくらくらいなのでしょうか。その集計は,SNA(System of National Account)という国際的に統一された基準に基づいて内閣府が行っており,国民経済計算(GDP統計)として発表されています。GDPというのは一国の経済活動の大きさを表すものですから,GDP統計は注目度の高い統計です。

GDP統計について

GDP統計には,四半期GDP速報(第一次速報,第二次速報)と,国民経済計算確報の二種類があります。まず,四半期というのは,文字通り一年を4つの期間に分割した1~3月,4~6月,7~9月,10~12月のことです。最新の経済の状況を把握するためには,一年ごとにGDPを知るだけでは不十分です。そのため,三ヶ月に一度,四半期GDP速報が発表されているのです。通常,第一次速報は当該四半期が終了してから1ヶ月半程度で発表され,さらにその1ヶ月程度後に数値が改訂された第二次速報が発表されます。第一次速報は速報性を重視しているためできるだけ速く発表されますが,その後さまざまな調整が行われ,第二次速報ではより正確な数値が発表されるのです。そして,一年分のGDPの確定値が,国民経済計算確報として当該年の翌年末に発表されます。

内閣府の国民経済計算(GDP統計)のページを見ると,主要統計データとして四半期GDP成長率,年次GDP成長率,四半期GDP実額,年次GDP実額の四つがあり,さらにそれらは実質と名目に分けられていることがわかると思います。

名目GDPと実質GDP

GDPというのは付加価値の総額ですから,金額で測られています。財・サービスの価格は一定ではなく時間とともに変化します。たとえば,30年前と現在ではわたしたちが受け取っている賃金も支払っている家賃も金額でみれば大きく変化しています。購入できる財・サービスの量で考えると,30年前の1万円と現在の1万円の価値は同じではありません。すると,30年前と現在の所得(GDP)を額面だけで比較しても,わたしたちがどれだけ経済的に豊かになったかということはわかりません。

たとえば,30年前は所得が1万円で,リンゴは1個100円だったとしましょう。それに対して,現在では所得が5万円に上昇する一方,リンゴは1個500円に値上がりしたとしましょう。このとき,購入できるリンゴの数は,30年前も現在も同じで,100個です。所得は名目(額面)では5倍になっていますが,実質的には(購入することができるリンゴの数は)変化していないということになります。このように,所得を金額で測るときには,物価のことを考慮しなければ,わたしたちが経済的に豊かになったのかどうかがわからないのです。

名目GDPというのは,額面のGDPです。言い換えれば,名目GDPは計測時点の物価水準で評価されたGDPです。たとえば,1980年の名目GDPであれば1980年の,2015年のGDPであれば2015年の物価水準で計測されているということになります。時点が違えば物価水準も違うので,異なる時点の名目GDPを比較しても,どちらの時点が経済的に豊かであるのかは判断できないということになります。

それに対して実質GDPというのは,基準年を決めてその基準年の物価水準で測ったGDPです。よく,「30年前の1万円は現在の価値に換算すると・・・」という話をしますが,実質GDPを計測するというのはこれと同じです。実質GDPの金額は基準年の価値に換算されているので,異なる時点のGDPであっても経済的な豊かさの比較が可能になるのです。基準年はいつに定めてもかまわないのですが,現在,日本の国民経済計算では2005年を基準年とし,実質GDPは2005年の物価水準で測られています。

データ

名目GDP 実質GDP 経済成長率
(実質)
GDP
デフレータ
2012/ 1- 3. 481,279.60 522,499.10
4- 6. 475,852.90 520,131.90 -0.453% 91.5
7- 9. 472,646.10 517,807.20 -0.447% 91.3
10-12. 472,399.10 517,077.60 -0.141% 91.4
2013/ 1- 3. 478,004.90 523,751.30 1.291% 91.3
4- 6. 479,537.10 527,482.60 0.712% 90.9
7- 9. 481,857.00 530,069.60 0.490% 90.9
10-12. 481,554.40 528,930.90 -0.215% 91.0
2014/ 1- 3. 487,989.00 534,681.50 1.087% 91.3
4- 6. 488,280.20 525,348.10 -1.746% 92.9
7- 9. 484,983.00 522,759.50 -0.493% 92.8
10-12. 488,750.50 524,381.30 0.310% 93.2
2015/ 1- 3. 499,868.40 529,455.70 0.968% 94.4

(単位)10億円,2005年価格
(出所)内閣府『四半期GDP速報(2015年1-3月期・2次速報)』

ここで実際に,2015年第一四半期(第二次速報)のデータを見てみましょう。データは過去に遡って時系列で提供されているので,2012年から最新のものまでをみることにしましょう。名目GDPおよび実質GDPについては,四半期GDP実額の名目(gaku-mk1512.csv)および実質(gaku-jk1512.csv)それぞれのファイルの2列目(B列)にある「国内総生産(支出側)」の値です。成長率とGDPデフレータについては,実額を用いて計算してあります(もちろん,数値は内閣府が公表している成長率やGDPデフレータのデータと一致しますが,ここではより小さい桁まで表示してあります)。

この表からすぐにわかることは,2012年~2015年の期間を通して,名目GDPよりも実質GDPの方が大きいということです。これは,基準年である2005年に比べて,この期間の物価水準が低いということを意味しています。

GDPデフレータ

もし,物価水準がずっと変化しなければ,名目GDPと実質GDPはどちらも同じになります。また,物価が上がれば実質よりも名目の方が大きくなるし,物価が下がれば名目よりも実質の方が大きくなります。つまり,名目GDPと実質GDPを比べれば,物価が上昇しているのか下落しているのかがわかるということになります。名目GDPを実質GDPで割って100倍したものがGDPデフレータです。この数値が100よりも大きければ基準年に比べて物価水準が上昇しており,100よりも小さければ基準年に比べて物価水準が下落しているということになります。

よく,「デフレ」であるといわれていますが,実際にGDPデフレータは2013年の第三四半期まで低下を続けていることがわかります。しかし,より最近では,GDPデフレータが上昇に転じていることもわかります。

成長率

GDPの成長率のことを経済成長率といいます。特に断りがなければ,経済成長率は実質GDPの成長率のことを指します。

\(t\)期のGDPを\(GDP_{t}\)とすれば,\(t\)期の成長率\(g_t\)は以下のように計算できます。

\( g_t=\frac{GDP_{t}-GDP_{t-1}}{GDP_{t-1}} \)

たとえば,2015年1-3月期の経済成長率は,(529,455.70-524,381.30)/524,381.30=0.00968です。経済成長率をパーセントで表すときには,\(g_t\)を100倍します。2015年1-3月期の経済成長率は,パーセントで表記すれば0.968%ということになります。

データを見るときの注意点

ここで,四半期データを見るときの注意点を述べておきましょう。それは,名目GDPや実質GDPなどの金額は,比較しやすいように年額に換算されているということです。たとえば,2013年の第三四半期の実質GDPは約530兆円となっていますが,これはこの3ヶ月の間に約530兆円の付加価値が産出されたということではなく,このペースが続けば1年間で付加価値の総額がこの金額になるということを意味しています。ざっくりいえば,実際にこの期間に産出された付加価値は530兆円の4分の1だということです。

四半期の経済成長率も,GDPの金額と同様に,1年あたりの成長率に換算して用いることがあります。

たとえば,2015年6月8日の日本経済新聞夕刊の一面には,発表された四半期GDP速報(第二次速報)について,以下のように述べられています。

内閣府が8日発表した1~3月期の国内総生産GDP)改定値は、物価変動の影響を除く実質で前期比1・0%増と、速報値から0・4ポイント高くなった。年率換算では3・9%増と、1・5ポイントの大幅な上方修正となった。

ここで,まず前期比1.0%増というのは,さきほどの0.968%の小数点以下第一位を四捨五入して1.0%です。次に,「年率換算で」というのは,この成長率が1年間続くとどうなるかということを表しています。3ヶ月間で0.968%増加したわけですから,この成長率が1年間続くとGDPは,1.00968×1.00968×1.00968×1.00968=1.0393倍になります。つまり,四捨五入して3.9%だけ増加するわけです。

この記事のなかの速報値というのは第一次速報のことで,改定値というのは第二次速報のことです。

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