カテゴリー別アーカイブ: 本の紹介

「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法

「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法

最近は,経済学,医療,教育といった分野の実証研究では,政策効果を正しく推定することが重要視が置かれています。そのために必要な考え方が因果推論です。

データから二つの事象に相関関係が見られたとしても,必ずしもそれが因果関係を表しているとは限りません。たとえば,大卒労働者の賃金は高卒労働者の賃金よりも高いということはデータから観察される事実です。しかし,だれでも大学に行けば賃金が上昇するかどうかは必ずしも明らかではありません。もともと能力の高い人がより大学進学というキャリアを選択する傾向にあると考えられるからです。もしそうであれば,大学に行ったかどうかは関係なく,賃金はもともとの能力によって決まっていることになります。大学に行くことによって賃金が上がる(因果関係)のか,もともと能力の高い人が大学に進学する(相関関係)だけなのか,どちらが正しいのかを知ることは個人の教育に関する意思決定にも教育政策の策定にも重要です。

因果推論はデータから観察された相関関係が因果関係を表しているかどうかを検証する方法です。この本は,因果推論のアイデアを非常にわかりやすく説明しています。もちろん,数式やら難しい専門用語やらは何も出てきません。その上で,実際に本の中で紹介された因果推論の方法を用いた経済学分野の研究事例が数多く紹介されています。

分量としてはやや軽めで,数時間もあれば目を通すことが可能です。その分,この本を読んだからといってすぐに実証研究を自分で始められるというものではありませんが,すべての経済学部生にまず読んでもらいたい一冊です。

これからの「正義」の話をしよう

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

「正義」について,カントやロールズなどの考え方を紹介しながら解説した本です。多くのトピックは経済学と関連しており,とくに所得の不平等について勉強する際には読んでおくことをおすすめします。

ハーバードでも人気のあるサンデル氏の著書だけあって,わかりやすいたとえ話を導入として,正義や公正についてのさまざまな考え方が紹介されており,哲学が苦手でも無理なく読めるように工夫されています。

開発経済学入門

開発経済学入門 (経済学叢書Introductory)

開発経済学の比較的広範なトピックを扱った,わかりやすい教科書です。

開発経済学は,おもに発展途上国の経済問題を扱う応用経済学の一分野です。最近の開発経済学は,開発ミクロ経済学と呼ばれるような家計の行動に焦点を当てた研究が主流になりつつありますが,この教科書では経済成長理論などのマクロのトピックも多く扱われています。また,政治制度や社会資本などに紙幅が割かれていることも特徴です。

開発経済学は非常に幅広い分野なので,全体像をつかむのが難しいところもあるのですが,この分野での研究者や国際機関の職員を目指す方,開発コンサルなどに就職を考えている方は,まずいろいろなトピックについて読んでみて,興味をもったトピックはより詳しく調べてみるという勉強方法が良いのではないかと思います。この教科書は読み物としても興味をかきたてられる内容で,開発経済学を概観するのにおすすめです。